あの曲をあの人の声で聞いてみたいシリーズその①/狂咲狂


曲としては大好きなのだけど、声が好みでないってことありますよね。まぁもちろんこれにはひとそれぞれの多岐にわたるバイアスがかかるんだろうけども、もし歌唱パートを好きなボーカリストで選べる世の中になったら、この人で買いたい、っていう、まぁありえないしあったらある意味怖いのだけど、そういう観点でいくつかご紹介したいと思います。

まずは僕の非常に大好きな曲で「恋するフォーチュンクッキー」。秋元康作詞で伊藤心太郎作曲、武藤 星児編曲のこの曲はご存知指原莉乃が初センターを務めたAKB48の大ヒット曲ですが、詩もメロディもアレンジも素晴らしいだけに、どうしても大人数の女子の合唱がネックになってしまう、という(これも主観ですがね)ことで、僕の理想としてはリードボーカルを往年の小泉今日子の声で聴きたいわけです。さらにハーモニーの部分もできれば小泉今日子による重ね録りだったとしたら即買います。

まぁPVやテレビ出演などの目に見える部分については誰でもいいんだけど、とにかく耳に入ってくる部分については、まさに「音楽」なのでこだわらせていただきたいのですな。もちろん、AKB関連の方たちがダメだということではないので誤解のないように。

次にTHE BLUE HEARTSの「青空」。甲本の声が嫌なわけではないのだけど、後の↑THE HIGH-LOWS↓やザ・クロマニヨンズの作品を含め、とにかく読めば読むほど歌詞(ちなみに作詞は真島)が深いのである。人生の不条理や切なさ、あるいは政治批判を絶妙なオブラートで包み(もっともシュール度合いが増すにつれ制限もされているようだが)、いわゆる本来のパンクロックが持つメッセージを体現しているわけだが、じつはそれ以上にメロディとアレンジが秀逸なので、メッセージが思ったほど浸透していない、という結果もあるのかもしれない。

可能なら生前の忌野清志郎、または氷室京介、平井堅あたりで聞いてみたい。要は、「もっと突き刺したい」のです。なんなら森進一でもいいかもしれない。

あと、これもこの十数年でかなり気に入っている曲としては「アナと雪の女王」で使用されている「Let it go」。もちろん松たかこやMay Jも悪くないのだけど、やはり英語詩の方が乗っかり具合が完璧だし、張り上げる部分のパワー炸裂度がイマイチなのは否めない。

理想はやはりデビカバ(David Coverdale)だ。低いところは渋く歌えるし高いところではその爆発感が素晴らしい(もっとも全盛期っていう前提ですが)。もしくはエリックマーティンも聞いてみたいかもね。

さて、もし本当に歌い手を選択して曲を買えるようになったとしたら…
たとえばPCやスマホの画面で坂本九の「上を向いて歩こう」を買うとする。そうすると「誰の声で買いますか」という選択肢が表示され、何人かのリストが出てくる。当然配給する側としては録音する必要があるので、採算が取れるという確信のある人か、経済的に余裕のある事務所や歌い手の名前しかないだろうが、それでもこれだけカバーの流行している時代なのだからありえないことはない。オーダー後に録音して納品という選択だってある。

さもありなん、人気や実力と比例するだろうが、それでも経済を消費する以上、聞くこと自体への対価なのでPVやギャラクターグッズとは違う結果になるだろうし、必然的に実力や個性のない歌い手はここでの売れ行きは期待できない。
つまり、普段ダンスやルックス、ギャラクターや話題性の力をいくばくか(またはほとんど)借りている人たちは、歌の実力主義の世界なので淘汰されてしまうのだ。

もちろん、そのシンガーを近しいからとか応援してるからとかでファンになっている人はいるだろうから、それなりにグッズなどは売れたにしても、この場合、買うのは曲のデータファイルに過ぎないのだから、聞いていて気持ちいい、感動する、また聞きたい、という「純粋な音楽作品」への欲求となるならば、これはまさに下剋上的でもある。

怖い怖い…