四冠王


半年間休まずに執筆いただいた吉井先生、25回の連載お疲れさまでした。
言い出しっぺの僕ですら22回ですから、さすがです。

たしかに音楽だけをテーマに毎週文章を書くのは大変です。日常の他愛もないことを書くのであれば別だけど、また中央でいつも刺激的な環境にいるわけでもないのだし、無謀と言えば無謀だったのかもしれない。

とはいえ、コロナ禍でライブがなかなか実現できないときに、こういうトライをしたことはとても有意義なことだったな、とも思うわけです。

ひとまず「七人のブロガー」というタイトルはいったん下げさせていただきますが、今後も不定期に、誰かが(主に僕でしょうけど)書いていきます。

さて、最近「おっ」と思った曲があるんだけど、それを紹介する前に、ポピュラーミュージックって、その完成度は主に四つの要素で構成されている気がしてる。

まずはメロディ、そして詩、アレンジ、最後に「声」。

まぁ売れるためにはここにプラス「プロモーション」や「運」、あるいは「時代考証」などもあるかもしれない。

それはさておき、その4要素を満たした(あくまで主観)曲を久しぶりに聞いた。四冠王だ。最低でも三冠王でないと人の心には残らないと思うのに四冠なのだ。

King Gnu – カメレオン

King Gnuのカメレオンだ。菅田将暉主演の月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」に起用されていることもあり、そのドラマを録画して見る以上、強制的に刷り込まれる、という前提があるにせよ(そこはプロモーションに成功しているわけだが)、この曲はそれまでのこのバンドの曲と一線を画している。

まずボーカルのメロディライン、特に歌いだしが高いキーが続くために、一瞬女性歌手?(宇多田ヒカルか?)と思うほどの繊細なファルセットの連続。「白日」もそうだが男性色は残っていた。
更にバンドっぽさを感じないアレンジ。これまでの曲はやはりロックバンド的な要素が少なからずあった。

ミックスボイス全盛の現在、まさに主流中の主流にいるんだろうとあらためてそのポジションを掴んだ彼らには、心から敬服する。

四つの要素といったが、洋楽は必然的に「詩」の部分ですでに四冠王は無理なのだ。英語が完璧にわかる人なら別だが、少なくとも僕は日本語以外はわからない。そういう意味で日本でヒットする洋楽というのは、他の三つの要素がすごいんだろう。

逆に言えばKing Gnuは僕からすれば「声」に関しては今後も約束された「揃ってしまっている要素」ということになる。

あくまで主観(くどいけどね)だが、僕が気に入る傾向にある「声」の持ち主は限られている。
Superflyの越智志帆や大黒摩季、広瀬香美のように、声質や歌唱力はもちろん、その圧倒的な声量や突き抜けた感のある人は無条件で好きだ。流行りのミックスボイスは多用しない人たちだ。

そういう意味でも久々に四冠王獲得のKing Gnuの皆さんおめでとうございます。