狂咲狂の渾身の一枚その③


1984年、ちょうど僕が20才になる頃、大見栄を張って公務員を辞め、夢を追ったにもかかわらず挫折したころ、少しすね気味に青春を謳歌していたころの思い出のアルバム「CONFUSION/大沢誉志幸」です。

ハードロックに傾倒していた僕にとっては、少し背伸びした作りの曲の連続は、その数年前に聞いた山下達郎の「MOONGLOW」をちょっとヤンチャにした感じで、すーっと入ってきたのを覚えています。当時通っていたレコードレンタルのお姉さんが進めてくれたレコードで、当時はちょうどCD(コンパクトディスク)が普及し始めた頃でしたねぇ。その頃のSONYは、CDを普及させるために10万円のプレーヤーを5万円で売り、一台5万の赤字を出してでも普及させたかったらしい。その波に乗ってこのアルバムもすぐにCDが発売されましたが、僕はレコードを借りカセットテープに録音して車でひたすら聞いていました。

ほろにがい恋愛や危ない連中とのトラブル、車の改造や暴走、周囲への反抗など、絵にかいたような青春時代に聞いていただけに、すべての曲が体に染みついているわけです。

当時は制作陣が誰かなんてあまり気にしていなかったのですが、実は最高の布陣が結集したアルバムでした。ニューヨークの一流ミュージシャンを集めて録音されているし、作詞家は銀色夏生(宮崎出身)、アレンジ・プロデュースは46歳の若さで亡くなった故大村雅朗、という当時でもかなりの力の入れ具合で作られているわけですが、実は「今、渡辺プロダクションでは全力挙げて吉川晃司に金を掛けているので、海の物とも山の物とも分からない奴に金を掛けていられない、今直ぐ日本に帰国せよ」と言われ、突然一方的にレコーディングが打ち切られたという逸話も残っています。その後、大沢が自身の資金を投じて、大沢単独でレコーディング作業を済ませた、とのこと。

さて中身ですが、シングルヒットした「そして僕は、途方に暮れる」や「その気XXX」もいいのですが、僕の個人的なお気に入りは「雨のタップダンス」、「BROKEN HEART」。

Yoshiyuki Ohsawa – CONFUSION(1984) 【FULL ALBUM】

大沢誉志幸は「ラ・ヴィアンローズ(吉川晃司)」「おまえにチェックイン(沢田研二)」「ガラス越しに消えた夏(鈴木雅之)」「1/2の神話(中森明菜)」等の楽曲提供者としても有名ですが、僕はやはり彼のかすれた声で歌う暗い?雰囲気が好きなんですね。暗いというか、淋しいというか、コードで言えばCM7やFM7など多用する流れですかね。メジャーセブンスっていうのは、なんというか10~20代のガラスのような脆く不安定な若い頃の心を表現するのにピッタシはまりますね。

それにしても今聞いてもやはりかなり斬新です。40年近くも前の作品とは思えないですが、逆に言えばポピュラーミュージックはまったく進化していないということの裏返しでもあるのかな、とも思ったりします。いや、進化する必要もないのかもしれないですね。