狂咲 狂の選ぶレコード大賞!


今年もレコード大賞が開催されるようだ。もう長いこと見ていないし、どの局でいつ何時に放送されるかも把握していないのだが、学生時代には布施明の「シクラメンのかほり」や寺尾聡の「ルビーの指環」、ジュディオングの「魅せられて」などの記憶は強烈に残っている。年末の風物詩の一つだったように思う。

そもそも「レコード大賞」ってなんなのか?

wikipediaによると、「対象年度に発売されたすべての邦楽シングルCDの中で「作曲、編曲、作詩を通じて芸術性、独創性、企画性が顕著な『作品』」、「優れた歌唱によって活かされた『作品』」、「大衆の強い支持を得た上、その年度を強く反映・代表したと認められた『作品』」、以上3点に該当する『1作品』に贈る。」ということらしい。

もっともらしいのだが、やはりそれぞれの人の主観に左右されるのは否めないし、そもそも音楽に順位や優劣をつけることを、一つの年末の大規模番組でやること自体、その業界を洗脳というか情報操作にしようとしている感も感じなくはない。

ま、とはいえ、僕が子供だった頃に受けた印象としてはやはりもっとも客観的に支持されたな、という印象をもった曲、になるのかな、と思った。そういう意味では、やはり YOASOBI の「怪物」でまちがいないだろう。

だがこれはやはり公平とは言えない。なぜなら「怪物」のリリースは2021年の1月6日で、まるまる1年、聞く者の心理に爪痕を残す時間があるのに対して、夏以降にリリースされたものは半分以下なのだから。だから例えばプロ野球の新人賞の対象のように、対象の期間や大衆に聞いてもらえる機会などを公平に保つ必要がある。

期間については、例えばYOASOBIについていうと、「怪物」よりも1年前にリリースされたデビュー曲の「夜に駆ける」が、1年かけてやっと「売れてるな」という実感を持ち、さらにその楽曲が前述の3点に該当するな、と感じるのはここにきてやっとなのだ。たぶんこれでもそうとう早い方だろう。

山下達郎の「クリスマスイブ」などは初出から5年、「ラブ・イズ・オーヴァー/欧陽菲菲」も初出から4年、「Wherever you are/ONE OK ROCK」も5年、スピッツの「空も飛べるはず」も2年以上経っている。

ここまで知名度のある人たちでさえそれほどの時間を要するし、そもそもCMやドラマとのタイアップなどがあったりするとますます不公平だ。どっかの山奥に素晴らしい作品を作る人がいて、しかもその演奏や歌唱力も素晴らしかったとしても、それが認知されるための土俵がなければどうしようもないのだ。

と、つらつらとゴタクをならべても現実が変わるはずもなく、マーケット至上主義の産物を評価することにはなんも興味はないので、個人的な一曲。やはり、どう考えても、「木綿のハンカチーフ」しかない。

ご存知、作詞は作詞家に転身して間もない松本隆(ここにもさまざまなドラマがあるらしいがあえて割愛)、そして作曲は筒美京平という太田裕美の曲。メロディやアレンジは言うまでもなく素晴らしく、松本隆の詩も当時ではさぞ冒険だっただろうに、今でも泣きたくなってしまう歌詞だし、そしてなんといっても太田裕美の、なんというか、当時なら今でいう「アニメ声」と揶揄されても仕方ないような個性的な声と、時折見せるファルセットとのチェンジ。50年近く前の曲で申し訳ないが、さすがのYOASOBIですらどうにも太刀打ちできないのであった。